寸劇

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寸劇

  「ぢょ、ぢょっき…さん……ぢょっ…ぎざ…ん…」 私は言った。 私の目の前に立つ、おしゃれなメガネをかけた男性……ちょっきさんが口を開く。 「てんめー…。 性懲りもなく、またしてもどこから(俺の家に)侵入してきやがった…!?」 そう言って、胸の高さで握り締めた右の拳を、前後左右に激しくガクガクと揺さぶる。 ちなみに、その握りしめた右の拳は、説明するまでもなく私の襟首をつかんでいる。 ガクンガクン揺れる視界に、生意気にもこじゃれたちょっきさんの部屋…略してメガネルームが映る。 そんな嵐の中の漁船のように大揺れな視界の中、私は思った。 ああ…。 やっぱりちょっき邸はいい…。 こんな臨死体験、自分のアパートではなかなかできない…。 2ヶ月前、お風呂の中でBLコミックを5時間ぶっ通しで読んでいる最中、意識が飛んだ時以来だ…。 そんな事を考える私の脳裏に、またしても去年亡くなったおじいちゃんの姿が映り始める。 にこやかな笑顔を浮かべた、私のおじいちゃんが…。 しかし今度のおじいちゃんは、前回見た時のような全身白装束ではなく、なぜか全身交通誘導員の制服を着ている。 そして、右手に持ったうまい●棒(メンタイ味)を、交通整備の人形がするみたいに、右下から左下へと勢いよくスウィングしている。 どうやら、私を交通誘導しているようだ。 確かにメンタイ味は私の好みだ。 もっとはっきり言ってしまえば主食だ。 食べたい…。 あのうまい●棒(メンタイ味)が…どうしても…。
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