寸劇

2/6
前へ
/43ページ
次へ
だがしかし。 だがしかし、おじいちゃんのあの誘導に従ってはいけない…。 なぜならあれは、きっと一方通行だから…。 生存本能に突き動かされた私は、ぷるぷると震える指先で、フローリングの床の、ある一点を差した。 目の前の、般若のような顔をしたちょっきさん…略してにゃっきさんが、ようやくそれに気づく。 「あー!! お前、もしかしてまた…!!」 にゃっきさんは大慌てで私の襟首から手を離すと、急いでその場所に向かって駆け寄る。 かわりに、またしてもフローリングの床にドサリと崩れ落ちる、私の体。 横たわった私の視界に、ちょっきさんがしゃがみ込む姿が映る。 そう、さっきまで私がいじくっていた、“アレ”の前に…。 直後、悲鳴のような声が、メガネルームに木霊した。 「やっぱりだッ!!」 ちょっきさんは、“ソレ”を急いで拾い上げると、私の方に猛然とダッシュしてくる。 その勇ましい姿を見て、私は思った。 ウホッ。 いい男。 しかし私は、残念ながら阿部高和さんではなかったので、いい男を見ても欲情しなかった。 いくらBLのために801万円ほどつぎ込んだ私とはいえ、違う。 私は、あの方(阿部さん)とは。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加