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だがしかし。
だがしかし、おじいちゃんのあの誘導に従ってはいけない…。
なぜならあれは、きっと一方通行だから…。
生存本能に突き動かされた私は、ぷるぷると震える指先で、フローリングの床の、ある一点を差した。
目の前の、般若のような顔をしたちょっきさん…略してにゃっきさんが、ようやくそれに気づく。
「あー!!
お前、もしかしてまた…!!」
にゃっきさんは大慌てで私の襟首から手を離すと、急いでその場所に向かって駆け寄る。
かわりに、またしてもフローリングの床にドサリと崩れ落ちる、私の体。
横たわった私の視界に、ちょっきさんがしゃがみ込む姿が映る。
そう、さっきまで私がいじくっていた、“アレ”の前に…。
直後、悲鳴のような声が、メガネルームに木霊した。
「やっぱりだッ!!」
ちょっきさんは、“ソレ”を急いで拾い上げると、私の方に猛然とダッシュしてくる。
その勇ましい姿を見て、私は思った。
ウホッ。
いい男。
しかし私は、残念ながら阿部高和さんではなかったので、いい男を見ても欲情しなかった。
いくらBLのために801万円ほどつぎ込んだ私とはいえ、違う。
私は、あの方(阿部さん)とは。
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