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(T)
―――
果てしなく広がる荒野。
夕焼けに紅く染まる空はどこまでも広がり、地平線は遥か彼方まで続いている。
その先に微かに見える小さな城からは、何事にも形容し難い邪悪な雰囲気が滲みでている。
その荒野で俺、デストロイヤー飯岳(いいだけ)は城を見据えていた。
足元には多数の死体。
人間のそれもあれば、頭は鰐(わに)、体はライオン、尾が蛇でできた怪物――この世界でキメラと呼ばれるもののそれもある。
――もうウンザリだ。
いつまで戦は続くのだろう。
人間とキメラの闘いが始まって早40年。
俺が生まれた頃から続いている。
だが、それももう終わらせる。
オレのこの手で。この剣で。
あの城に住む魔王を倒せば、この戦も終わるはずだ。
「……今さら緊張なんてする必要もないだろ」
オレには親父から受け継いだデストロイヤーの名がある。
恐れる事はないさ。
さぁ、向かおう。
戦を終わらせに。
―――
「……どうなる事やら」
ベッドにうつ向きながら、僕は一人呟き、ふと時計に目をやる。
深夜二時。
「デストロイヤー飯岳」の27巻を読んでいたらもうこんな時間になってしまっていた。
よいこのおやすみの時間なんて知った事じゃない。僕はよいこじゃないから。つまらない日常を送る、つまらない学生。
明日――正確には今日だが――高校の入学式だっていうのに、僕は何をやっているんだろうな。
仕方ないか、まさか1巻の主人公デストロイヤー飯岳(父)からデストロイヤー飯岳(子)に18巻で主人公が代わってからこうも話が膨らむとは思わなかったからな。
仕方ない、悪いのは作者だ。
さて、さっきも言ったが、僕は本当につまらない日常を送っている。
特筆すべき事じゃないけど、中学生時代は朝決まった時間に起きて、決まった時間に学校に行き、決まった時間に帰り、そして決まった時間に寝る。
そんな生活を送っていた。勿論友達がいない訳じゃないよ、うん。
高校ではどんな出会いがあるだろう。
僕は本をベッドの端に投げ捨て、新たな学校生活に胸を膨らませながら、眠りに落ちた。
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