プロローグ

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(U) ――― 広い広い砂漠のど真ん中にある王国に一報がとどいた。 父、デストロイヤー飯岳が帰還したというのだ。 2ヶ月前に王国に襲来したキメラの大群によって俺のおふくろの命が奪われた。 親父はその敵討ちのために、1人で魔王の住む城へ乗り込んで行ったのだ。 俺は親父に会うために王国の城へと急いだ。 親父の姿を見た俺は落胆した。 片腕がもがれ、首と脇腹からの出血が止まらない。 親父は2日後に息を引き取った。 俺の手には親父の愛刀である龍剣『龍曼荼羅百式(ドラゴマンダラヒャクシキ)』。 「俺が必ずこの剣で親父とおふくろの仇をとってやる」 俺は涙をこらえ剣を握りしめた。 ――― 「……はぁ」 私はため息混じりに本を閉じた。 このため息はこの本、デストロイヤー飯岳 18巻に向けられたものだ。 まさか世代交代するなんて思ってもいなかった。 私がこの物語に出会ったのはつい最近。 現在27巻まで出版されているのは知っているが、こんなところで主人公が死ぬとは思わなかった。 「もう寝よう」 午前2時35分を示している時計を見ながらそう呟きスタンドの電気を落とした。 ここで私のことを話しておこう。 私は現在中学生と高校生の中間、あと数時間で高校生になろうとしている。 周りからは清楚でかわいいと言われているが、私自身そうは思わない。 むしろ、コンプレックスだらけだ。 中学時代はいつも周りに友達がいたが、中学を卒業した今、みんな学校がバラバラになった。 ちなみに彼氏は生まれてこのかたその影すらない。 まぁ高校での出会いにでも期待しておこう。 ……私は夢の中へと落ちていった。
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