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私は軽く痺れた足を、ゆっくりと延ばしながら立ち上がった。制服のスカートに縦皺が刻まれている。
「そんなにかかってないんだけどなー。」
私はスカートを左右にひっぱりながら、タンスの前へ移動した。この家の唯一の姿見は、両親の部屋の和ダンスについた開き扉の鏡だけだ。といっても、団地のこの家に、両親の部屋もくそもない。扉すらない各部屋に、プライバシーは存在しないのだ。
いつもの様に、タンスの扉をあけ、私は姉の部屋からもってきたワンピースに着替える。黒地に赤い花が点々としたこれが、最近のお気に入りである。これに、黒のストッキングに茶色のファーの上着、そしてヒール。まだ髪を染めることが出来ない私は、せめて洋服だけはと、服装には力を入れていた。
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