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私は居間に移動すると、台の上に鏡を置く。この狭い家に、私の部屋は存在しない。17年間生きてきて、悩んだ事もあったが、慣れとは恐ろしいものである。今では全く気にならない。
長時間、結んでいたせいでついた、2つ結びの型に櫛を入れる。決していい髪ではないが、伸ばそうと決めて、4年間。十分な長さがある。
髪をとき終わった私は、化粧ポーチから、下地を取り出し顔に塗り付け、粉をはたき、ファンデを塗る。この時点で、「学校の私」とは違う私が見えてくる。
茶系のアイシャドーをアイホールにのせ、ラインをひき、睫毛をあげる。マスカラを塗り、つけまつげをつけ、下まつげを調整し、下ラインを軽くひく。つくりあげた「いつもの私」が出来た。
それでも何か物足りないと、この日は髪を巻いてみた。くちばしピンで髪をとめ、少しずつ丁寧に巻いていく。女は面倒だなと私の周りの男は言うが、この時間が、私はたまらなく好きだった。
「学校の私」とは違う「私」に変われる、ちょっとやそっとの労力くらいへのかっぱである。
シューっ…
髪を巻きあげ、スプレーを散らす。
「…出来た!」所用時間35分。まずまずの出来だ。
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