はじめに

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ほとんどの役割が決まっていって、教室の中は生徒達の私語でざわついていた。 「あいつコンドーム持ち歩いてんのかぁ」けんはさっきのちょっとした騒動を思い出していた。うしろの席に座っているけんはさきほどの女生徒を目で探していた。するとちょうど黒板の前のあたりに座っていたその子は「ゆか」と言う。一見地味ではあるが、肩までのしなやかな黒髪で背丈は小柄なあどけなさが残るかわいらしい様子である。けんは紙をまるめてボールに見立て、「ゆか」にむかって投げた。 「イテッ」後頭部をなでながらそのボールを拾い、くしゃくしゃになっているそれをひろげると「うしろ向いて」と書かれていた。 その指示に従いゆかが振り向くと、手招きしているのが見えた。けんはこっちに来いと目で呼んでいた。教室のすみにあたるところがけんの席であるのでそこのすみっこにゆかをすっぽり押し込んで話し始めた。
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