5人が本棚に入れています
本棚に追加
「結希、話があるんだけど、今いい?」
母親から、出掛けに声を掛けられた。
前は、こんな風に聞かなくても、すぐに話し掛けてたはずなのにね。
「ごめん。私、急いでるから、また次にして。」
「今日は、何時ごろ帰ってくるの?」
「…わからない。」
母親の顔を見ることなく、後ろ手にドアを閉めて、家を出た。
3月の朝は、まだ少し肌寒く、身震いしながら自転車にまたがる。
ここ1年半でだいぶ長くなった髪を風に絡ませ、自宅前の坂を一気に下りながら、駅へと向かう。
早く 大人になりたい。
早く 一人になりたい。
早く 今から抜け出したい。
早く…
早く……
最初のコメントを投稿しよう!