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束は、ある家庭の事情から祖父の旧友である源じぃの元に預けられる事となった。
祖父といっても、一度も会った事がなく、今では源じぃの事を本当の祖父の様に慕っていた。
源じぃはその業界では有名な坊さんらしいが、そんな事は束にとっては何の意味もなかった。
ただ何より、凄く豪快で、底抜けに優しい所が大好きだった。
血の繋がりも無いのに、家族の様に接してくれた源じぃ……
酔っ払うとよく、
「生涯天涯孤独だと思っていたが、めんこい孫ができたわい」
って言って笑い飛ばしていたっけ。
そんな大好きな源じぃの元を離れて、遠く離れた高校へ入学する為に今夜旅立とうとしている。
もともと束は、中学を卒業したら普段からアルバイトでお世話になっている会社へ就職しようと考えていた。
源じぃには仕方のない理由があって、金銭的余裕が無い事を知っていたからだ。
少しでも生活の足しになればと、バイト代は全額源じぃに渡していた。
中学三年の秋に、進路相談の為三者面談が学校で行われた。
その日の夜は、久し振りに長い時間かけて、お互いの胸に秘めた思いを伝える為に家族会議が行われた。
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