旅立ちと別れのセレナーデ

4/20
前へ
/140ページ
次へ
束は思いの全てを、源じぃにぶつけた。 高校に行かなくても、一人前の立派な男になる覚悟があること。 金銭的な問題だけじゃなく、自分なりに一生懸命考えた結論であること。 そして、源じぃに少しでも幸せでいてもらいたいこと……。 束の話を最後まで聞いた所で、源じぃも思いを口にした。 束の成長を心から願っていること。 その為に、もっと広い世界を知って貰いたいこと。 金銭面は心配しなくても、高校に通わせてあげられるアテがあること。 そして、束と生活をして、既に十二分に幸せだったこと……。 その話の後、大粒の涙を流す束と、照れ臭そうに笑ういつも通りの源じぃの姿があった。 後日談ではあるが、束が通うことになる高校に既存の交通機関を使うと、登下校だけで一日が終わってしまう事を、源じぃは話していなかった。 二人の間に、もう一波乱あったことは言うまでもない。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加