旅立ちと別れのセレナーデ

6/20
前へ
/140ページ
次へ
「絶対に、肌身離さず持っておくんじゃぞ。 『福千』という神石から創られたという有り難いお守りなんじゃ。きっと様々な厄災から身を助けて頂けるはずじゃ。 年をとると心配性になってかなわんな。約束じゃよ、束……」 源じぃの真剣な眼差しを真摯に受け取る。 そして、迷わず首飾りを架けた。 「わかった。その約束、必ず守るよ」 束は、源じぃの想いに答えるかの様に淀みなく答えた。 「よし、男の約束じゃぞ。 それと、これは以前話しをした『黒田不動産店』までの地図になっておる。 店主は大分変わり者だが、信頼できる人物じゃ。束の事は事前に話を通してあるから、きっと力になって貰える事じゃろう」 黒田不動産店の主人とは、古くからの飲み仲間であるらしい。 源じぃいわく、 「あいつは、返しても返しきれない借りがあると思ってるようじゃ。わしに言わせたら、どっこいどっこいじゃがの」 だそうである。 「向こうに着いたら、地図を頼りに直ぐに向かうよ」 束が言い終えると直ぐに、源じぃはもう一つ懐から何かを取り出した。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加