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「後これは、困ったら使いなさい」
そう言って、源じぃから手渡されたのは丁寧に手ぬぐいに包まれた束名義の預金通帳だった。
中を覗くと、何年も前から毎月積み立てられていた事が伺える。
入金額をみて直ぐに、源じぃに渡していたアルバイト代であることは容易に想像が着いた。
「わりぃ、源じぃ…… これは受け取れないよ……
大丈夫! 生活費はバイトでもして稼ぐから」
これは源じぃの為に稼いだお金であり、受け取る訳にはいかないと思い、どうにか通帳を返せないか思案を巡らす。
「これは、もともとお前の金じゃて。仕送りは、してやれそうもないからな…… ちなみに、暗証番号はわしの誕生日じゃ!」
どこか誇らしげに、暗証番号の下りを楽しそうに話す源じぃ。
この様子だとテコでも動かない事は今までの経験から判りきっているので、諦めて素直に通帳を受け取ることにした。
源じぃの誕生日は元旦……
つまり暗証番号は0101……
セキュリュティーなんてあったもんじゃない暗証番号を知って、昭和生まれのアナログ世代の恐ろしさを痛感したと共に、源じぃらしいとも思った。
しかしながら、暗証番号の話に深く突っ込むと、泥沼化して面倒くさいと感じ、そこは華麗にスルーした。
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