File.02 とある新米諜報員の任務

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   書類整理をしていたら、突然ヨエルさんから声をかけられました。  どうやら首長――もとい主席総長ヘル様からお話があるそうで、至急来てほしいとのこと。  キリが良いところで書類整理を一旦中断し、足早にヘル様の自室へ向かった私は今 「ミルクとレモンは使う?」 「あ…、ではレモンを」 「わかったわ」  何故かヘル様とお茶をしていました。 「あ、あの…首長様」 「忙しい時に呼びつけてごめんなさいね、ハーモニア」 「いえ、そんなことは……あの、私は何故呼ばれたのでしょうか?」  ヘル様からの呼び出しとあってなんだか少し怖い気もしましたが、私はレモンを絞った紅茶を啜りながら思い切って聞いてみることにしました。  おそらく、私と紅茶を一緒に飲むためだけに呼んだなんてことはないだろうし。  ミルクもレモンも一切入れずにストレートで紅茶を啜るヘル様は、やがてカップから口を離して言いました。 「実は貴方にはとある音楽世界の調査をしてもらいたいの」 「音楽世界…ですか?」  ヘル様の口から出たのは、聞いたことの無い世界の名前。  …ってなんだろう。楽団でも盛んなのかな?  そんなことを模索していると、ヘル様が微笑を浮かべました。 「音楽好きの神様が創造した、音が溢れた世界のことよ。人間から非人間までありとあらゆる種族が住み、剣と魔術の幻想的な文化も現実世界のような近代的な文化もある異色の世界だけれど…他の異世界より、はるかに治安が良いわ」 「そうなんですか!?」  ヘル様が仰有ったその世界の情勢には、流石の私も驚きでした。  様々な種族や文化が存在しながら、争いも戦争もなく平和に暮らしているような世界が存在していたなんて。 「…やってくれる?」  そして、その世界の調査を私に依頼するというヘル様。  しばらく口をつぐんでいた私ですが、返答はもちろん決まっています。 「……わかりました。その依頼承ります」 「ありがとう。ただ、何があっても良いように探索の準備は万端にね」 「はい!」  というわけで私、廻間世界情報部機関オラトリオの新米諜報員ハーモニアは、ヘル様からの依頼で音楽世界へ行くことになりました。  一体、どんな世界なのでしょうか?  初めて行く世界なので、とても楽しみです。
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