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ハローはうろう読者の皆様。
私ひかりは、師匠の陰謀で音楽溢れた世界にある中心街の入り口に着地しました。
蒼煌光のミステスと魔術が使えなかったら大怪我をしていたかも知れません。師匠、後で本当に覚えてろ。
ひとまずひかりは、この賑やかな街並みとは大層雰囲気が違う刀剣――もといエクスティンを右腰に提げた。
ここは剣も魔術も近代的な文化もある世界。護身用として持っていても問題は無いだろう。
「しっかし…行ってこいって言っても、特に変わった様子なんてないでしょうに」
周囲の何処を見回しても行き交うのは一般ピープル。おまけに街全体の治安も以前とほぼ同じに見受けられる。
様子を見に来る必要なんてなかったのではなかろうか。
とひかりは心の中で思う。
(でも、到着早々すぐに帰ったらお師匠がうるさそうだからなぁ…仕方ない、ちょっくらMZDやミミ達に挨拶しとこ)
そんなことを思いながら、ひかりが足を踏み出そうとした時だった。
「おや、またあの現世最高神から無理難題をふっかけられたのですね」
そんな聞き覚えのある声が耳に入ってきたと共に、自分の隣に微かながらヒトの気配。
最初は空耳かと思ったがこの飄々としながらも慇懃で明瞭ある中性的な声は、あの男しかいない。
ひかりは目線だけをその声の主へ向けた。
「…もしかしてダスク?」
「ふふふ、ご名答です」
ひかりの言葉に瑠璃の瞳を細めて微笑を浮かべる男――ダスク。
泣く子も黙る廻間世界の万屋組織の参謀長の地位に就く、廻間世界史上最強の魔術師その人である。
そして、私の大切な友人の一人だ。
「久しぶり! 元気にしてた? …ってあれ?」
ダスクの姿を、ひかりは思わず二度見した。
「どうかなさいましたか?」
「いや、なんかいつもと違うような…イメチェンした?」
――彼はいつもの黒装束のケープに小さなハットという服装ではなかった。
一般の成人男性が着こなすような落ち着いた真紅のジャケットに白黒モノトーン調のインナーとスラックスのカジュアル服。
肩には焦げ茶のショルダーバックをかけ、そして髪色も普段の淡藤色ではなく深みのある暗い藤色をしている。
ひかりの指摘に気づいたダスクは「ああ」と声をもらすと、言った。
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