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皆さんこんにちは。廻間世界情報部機関オラトリオの新米諜報員、ハーモニアです。
音楽世界に降り立って早3時間が経過しました。やはりこの世界は首長様の仰有った通り、多文化でありながら住人が仲良く暮らしているようです。
そんな私は今
「で、お前は一体何者なんだ。この国に何しに来た?」
すごくピンチです。
「いや、ただの観光客なんですけど…」
「怪しげな液晶操作しながら、都を隅々まで観察するような奴の何処が観光客だよ」
私の言葉に、金の三日月を掲げた黒兜と黒マントに身を包んだ眼帯の男の人は更に険しい表情をしました。
――此処は東洋文化が栄え、西側と東側に隔てた都が存在する『大和の国』。
廻間回路を開いた場所がこの大和の国の西側だったので、手始めに調査を開始しました。
ちゃんと建物の死角で光の液晶画面を開いて都の様子をモニターチェックした…筈なのですが、どうやらこの男の人に見られていたようで、彼と彼の部下らしき人達によって有無言わさずにこの屋敷へ連行。
そして文字通りお縄にされてしまったと言うわけです。
…首長様に何て説明したらいいんだろう、この大失態。
「あの、出来れば解放してほしいのですが…」
「それはNOだ。お前のような怪しい奴は野放しにしておくわけにはいかねぇ。此処で暫く大人しくしてもらうぜ」
「じゃあ逃げないのでせめてこの縄を解いて下さい。圧迫感で気分が悪くなりそうです」
「緩めてはやるが解きはしねぇ」
どうやら解いてはくれないようです。と言いましても実は自力で解くことが出来たりするのですが、そうすれば更に怪しまれるのであえて縄抜けはしないようにしています。
でもこの男の人の部下らしき人達が私の縄を緩めてくれたお陰で、多少は楽になりました。
とまあそんなやりとりをしていた矢先、慌ただしく駆け寄る複数の足音とともに扉が開きました。
「マ…マサムネ様! また例の奴らです!!」
「何ィ? チッ、またかよ!」
扉から入ってきたのは、金の三日月印の黒兜と黒マントもといマサムネと呼ばれた男の人の部下らしき人達。
部下らしき人達の言葉に彼が忌々しげに表情を歪ませたのは一目瞭然で
「行くぞお前ら!」
「イエッサー!」
私と数人の部下らしき人達をこの屋敷に残して、彼はそのまま開け放たれた扉から出て行ってしまいました。
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