File.04 これはピンチですか?

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  「…そいやさっ」  このような状態のことを人は放置プレイと呼ぶのでしょう。  しかし流石に縄で縛られたまま放置プレイされるのは嫌なので、さっさと縄抜けします。  さん、にー、いち…を待たずしてはい、この通り。 「縄抜けしやがっただと!?」 「すげぇ、俺初めて見たぜ! 漫画やテレビアニメのように縄抜けする奴!!」  予想通りの反応、誠にありがとうございます。  しかし私にはそんなことよりも気になることがあります。それは 「あの…先ほど仰有っていた、例の奴らとは一体何でしょうか?」  そう、先ほど屋敷に駆け込んできたマサムネの部下の意味深な言葉。  言い方からすればそれは今回が初めてというわけではなく、以前から度々起きているかのような言い回しでした。  私の問いに、待機組と相成ったマサムネの部下がきょとんとした表情を浮かべていますが気にしません。 「知らないのか? この大和の国では最近、ならず者による悪事が絶えないんだぜ」 「ならず者、ですか?」 「ああ。最初は店のちょっとした金品や品物を奪うだけだったんだが…」 「最近では店自体に襲撃をかけるだけじゃ飽き足らず、民家からも金や食料を強奪しやがる。本当に酷い奴らだよ」  同じく待機組と相成ったもう一人の部下の方も話に加わり、私はこの国で起きている異変を彼等から聞かされました。  この大和の国は元々平和な都だったそうです。領主が善良な人柄であることもあるのですが、中でも大和の国に存在する二つの組織が一番の理由でした。  一つは“黒き蛇”の異名を持つギジリという男が統率する『サザラギ機関』。  そしてもう一つは、先ほどの眼帯をした真っ黒な男の人――もといマサムネが統率する『義賊・暗闇烏』。  その二つの勢力がそれぞれ東西に分かれて拠点を構え、日々城下町の巡回を行うことで大和の国の治安を守っているのだとか。 「正直言って俺達だけじゃ対処しきれなくなってきている。ならず者は増えるばかり、それに東側にいるサザラギの者に掛け合おうにも…」  そこまで言って、マサムネの部下は口を閉じました。  何か深い事情があると見受けられましたが、聞けるような雰囲気ではありませんでした。ですが、 「あの!」 「!? な…何だ?」 「私をマサムネさんの所へ案内して下さい!」  首長様、ヒトを助けてこその蔭人ですよね。
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