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その頃ひかりとダスクは、MZDのいるビルへ向かっていた。
その際に何人かの一般市民と行き交ったが、やはりいつもと変わらない様子と見える。
周囲を見渡すように視線を左右に向けながら、ひかりは小さく息をついた。
「やっぱりいつもと同じだよね…お師匠、何で様子を見てこいなんて言ったんだろう」
「深刻な異変ほど表面上では見えないもの。もうしばらく探索した方がよろしいかと」
「まあそうだけどさ」
確かにダスクの言う通り、目に見えないだけで何か異変があるのかも知れない。
ひとまずMZDに会って、何か変わったことがないか聞いてみてからでも遅くはないだろう。
ひかりがそう思った時だった。
「あ、ひかりちゃんだ!」
ふいに真横から聞き覚えのある声。
最初はその声の主が誰だかピンとこなかったひかりだったが、ぱたぱたとこちらへ駆け寄ってくる二人の少女の姿が見えるとすぐに誰だか理解した。
「ミミちゃん、それにニャミちゃんも!」
声の主は二人の少女――もとい兎耳少女のミミと猫耳少女のニャミだった。
お返しと言うようにひかりが親しげに手を振ると、ニャミは嬉しそうに手を振り返してくれた。
「久しぶりだね! いつこの世界に来たの?」
「ついさっき来たばかりだよ。ちょっとこの平和な世界で息抜きしたくてさ。ついでにみんなとポップンでもかと思って」
「そっかー。…ってあれ? ひかりちゃん、そちらの人は?」
ニャミと同じく嬉しそうに話していたミミだったが、ひかりの隣にいるダスクが目に留まったようだ。
きょとんとした表情で彼へ視線を移して首を傾げるミミに、ひかりは声をもらした。
「あ、そっか。二人は初対面だったね。この人は私のとm」
「ひかりと親しくお付き合いをさせていただいております、影向(ようごう)です。どうぞ宜しく」
ひかりの言葉を遮ってダスクが勝手に自己紹介を始めた。しかも飛びっきりの爽やか営業スマイルで、である。
「え、ちょダス…」
「影向さんって言うんですか、珍しい名字ですね!」
「ええ、よく言われます」
――おい待て、勝手に喋るな!
勝手に自己紹介した挙げ句に語弊を招くような言い方をしたダスクに講義しようとしたひかりだったが、今度はニャミによって遮られた。
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