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ミミ達と別れたひかりとダスクはMZDの仕事場であるビルを目指して歩き続けた。
遠くの方に小さく見えていたビルは徐々に大きくなり、目前となった今では六本木の某所を彷彿させるような高く聳え建つ摩天楼である。
近付いてきた目的地にダスクは興味深そうな表情をすると、瑠璃の双眸でまじまじと見上げた。
「MZDは此処で仕事をしていらっしゃるのですか」
「応音楽世界を創造した神なうえに音楽業界では一番の有力者だからね。ちなみにMZDのオフィスは最上階だよ。とりあえず中入ってみようか?」
「そうですね」
アポ無しの訪問になってしまうが、この際仕方ないだろう。
ひかりとダスクがビルの中へ足を踏み入れようとした――時だった。
「失礼致しま…うぉおっ!?」
「…っ!!」
ビルへ足を踏み入れようとしたひかりを出迎えたのは、ビルの死角から飛び出して来た少女からのタックルさながらの接触。
死角からの飛び出しは流石のひかりも回避出来る筈がない。
文字通り少女と衝突したひかりは、そのままぺたんと尻餅をついた。
「…ひかり、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫だ、問題無い!」
相変わらずの無表情ではあるが何処と無く心配そうに眉を下げた表情で尋ねてきたダスクに、笑顔で親指を立てるひかり。
師匠であるフェンシエンスからの修練で受け身をとる練習を何度も行っている賜物か、無傷で済んだらしい。
立ち上がったひかりはそのまま同じく尻餅をついた少女へ向き直ると、屈むように手を差し伸べた。
「キミ、大丈夫?」
「あ、はい…」
ひかりから差し伸べられた手に最初は戸惑った少女だったが、やがて自分の片手を伸ばして掴まるとゆっくり立ち上がってみせる。
ネコのフードつき長袖パーカーを頭からすっぽりと着ているため表情と怪我の有無は確認出来なかったものの、どうやら怪我はしていないようだ。
「本当にごめんなさい…私が前を見ていなかったから」
「気にしないでいいって! 死角からのBダッシュはちょっとびっくりしたけど、お互いに怪我もなかったんだからさ」
「でも…」
謝罪の意を込めてひかりとダスクへ深く頭を下げる少女。
そんな彼女に対してケロッとした表情で片手を振るひかりの横で、ダスクがいち早く何かの気配に気付いた。
「…ひかり、誰か来ます」
「え?」
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