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ダスクが宣告した直後、漆黒のマントを靡かせながら少女が飛び出してきた死角から現れた十人の人影。
顔を隠すように布をあてがった藍と漆黒のトンガリ帽子を被るという“隠密部隊”のような彼らは、あっという間にひかり達を取り囲んだ。
突然現れた謎の者達を見渡すように一望したひかりは、ダスクに振り向いた。
「誰この人達、ダスクの部下?」
「こんな時にボケないでいただけますか。そもそも刻影は少数精鋭。同僚はいたとしても部下はおりません」
「ですよね。じゃあこいつ等は一体…」
何処のどいつだ。
そう言おうとしたひかりの後ろに隠れるようにいた少女が、控えめに挙手をした。
「あの…多分、私が狙いだと思うの」
間。
「……え、キミ!?」
「はい…実は今まで、この人達に追い回されていて…巻き込んでしまって申し訳ありません」
驚くひかりに、少女は申し訳さそうにうなだれる。
と、今まで黙っていた漆黒マントの一人が口を開いた。
「その通り。用があるのはそこにいる人形師のみだ」
「未成年の女の子を、しかも帯刀しながら多勢に無勢で追い回すのはどうかと思うけど」
ひかりの言葉に、最初に物申した漆黒マントの人物は驚いたように表情を変える。
――この少女、一瞬のマントの翻しで自分達が帯刀していることに気付いたというのか?
少しの間沈黙を貫いていた漆黒マントだったが、やがてひかりの腰にあるエクスティンを見て何かを納得したように頷いた。
「…なるほど、旅の者か。ならば悪いことは言わない。そこの人形師を引き渡してもらおうか」
「帯刀した状態で多勢に無勢で追い回すような輩の頼みを素直に“はいどーぞ”なんて聞くとでも?」
「では、あくまで引き渡さぬと言うのだな?」
「ええ、まあ。というよりまずは自分の服装と装備と雰囲気を鏡で見て出直してこいや」
少女を引き渡せという漆黒マントの連中の要求をひかりが即答で拒否したことにより、両者を包み込む緊張が一気に高まる。
そんな中、最初に言葉を切り出したのは漆黒マントの人物だった。
「そうか。ならば……力尽くで奪うまでだ!」
そう宣言した漆黒マントの人物に感化され、腰の刀を抜いた他の漆黒マントの者達がひかり達へ襲いかかった。
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