File.00 忍び寄る闇の足音

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  「ふーむ…この部分はちょっとアップテンポでいくか」  深夜2時16分――音楽世界、中心街に立つビルの最上階。  跳ねた茶髪にサングラスと帽子を合わせた今風の少年もとい音楽世界を創造した神様ことMZDは、次の曲を書き起こすために遅くまで作業をしていた。 「神ー、珈琲入ったよー」 「おうサンキュ」  そこへ黒い液体が入ったカップを乗せたお盆を手に、黒い不定形の影――?(ハテナ)が入ってきた。  どうやら絶賛徹夜中のMZDに珈琲を淹れてきたらしい。  ハテナに気づいたMZDはそちらへ顔を上げながら作曲の手を止めると、彼が持つお盆の上にある珈琲を手にとり、一口啜った。 「にがっ」 「そりゃあ珈琲だもの。砂糖とミルク入れる?」 「ああ、頼むわ」 「了解っ」  お盆を抱きしめるように持ったまま頷き、ひゅるりと吸い込まれるように台所の奥へ消えるハテナ。  それを見送ったMZDは珈琲の入ったカップをテーブルに置き、再びペンを取った  時だった。  突然、MZDの後方から一筋の冷たい風が吹いた。 「…ん?」  確か窓は締め切っていた筈だったと思ったが。  疑問に思ったMZDが窓の方へ振り返ると  開け放たれた窓の縁に、一人の少女が座っていた。
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