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━━……
あれから15年……。
━━……
「クスッ。
懐かしい。」
綺麗な長い黒髪が特徴的な大人の女性へと成長したちぃは、すっかり色褪せてしまったくまのぬいぐるみをギュッと抱きしめて優しく笑った。
ガチャリ。
「ただいま~。」
ドアが開くと同時に男性の声がした。
「おかえりなさい。
あら、びしょ濡れじゃない。」
びしょ濡れのまま立っている少し筋肉質の男性に、ちぃはタオルを手渡した。
「いや~急に雨降り出して参ったよ。
そんな日に限って傘売切れとかね。」
頭をタオルで拭きながら男性は苦笑いした。
「とんだ災難だったね。」
ちぃも男性の顔を見ながら苦笑いした。
「全くだよ。
おや?
これは……。」
男性はちぃが抱きしめているくまのぬいぐるみに気づいた。
「荷物整理してたら出てきたの。
懐かしいでしょ?」
「あぁ、懐かしいな。
このくまちゃん、いつも肌身離さずもってたからな。」
この男性は大人へと成長したまぁくんだ。
「川に落ちけどね。」
くまのぬいぐるみをまぁくんに手渡し、ちぃは悪戯っぽく笑った。
「うっ……。
ごめんな、ホント。」
罰が悪くなったまぁくんは下を向いた。
「気にしてないよ。
このくまちゃんの為にまぁくん戦ってくれたしね。」
子供を慰めるかのように、ちぃは優しくまぁくんの頭を撫でた。
「そうだったな。
あん時は夢中だったからな。」
ちぃにくまのぬいぐるみを返しながらまぁくんは少し照れた。
「あの時、がき大将だったたっちゃんも今じゃ小学校の先生だもんね。」
ちぃはしみじみと言う。
「人って変われるんだよな~。」
うんうんと頷きながらまぁくんは言う。
「あたし達も結構変わったわよね。」
まぁくんの顔を見ながらちぃは言う。
「俺、ちぃを思う気持ちは変わってないからな。」
耳まで真っ赤にしてまぁくんは真っすぐにちぃをみた。
「ありがとう。」
満面の笑みでちぃはまぁくんにお礼を言った。
「……俺、あの頃からちぃに夢中だったからな。
つい、意地悪したくなってな。」
顔をポリポリかいてまぁくんは恥ずかしさを誤魔化した。
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