水無月。

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「今が幸せなら結果オーライじゃない?」 恥ずかしさを誤魔化してそっぽを向いているまぁくんの顔を覗き込み、ちぃはブイサインをした。 「……そうだな。 この子にも幸せになってほしいな。」 まぁくんは優しくちぃのお腹を撫でた。 「そうね。」 ちぃもそれを愛おしそうに見つめた。 ちぃこと『浜野 千秋』は『相川 千秋』になっていた。 そう……。 まぁくんこと『相川 正喜』の妻になったのだ。 二人はめでたくゴールインし、今ちぃのお腹には小さな命が宿っている。 二人は小さな命の誕生を心待ちにしている。 にゅっ。 ちぃの手に変な感触がした。 「にゅって……キャッ!」 何とちぃの手の甲にかえるが乗っかってる。 「うおっ! かえる! 俺にひっついてきたのか!?」 まぁくんはびっくりしてかえるを掴んだ。 「あたし達の話に参加したかったのかな?」 まぁくんが掴んだかえるを見てちぃは言う。 「そうかもな。 ほら、おかえり。」 窓を開け、まぁくんは外へかえるを逃がした。 「ゲロ。」 まるで『さようなら』と言うかのように、かえるは一声鳴いて外にピョンピョンと出ていった。 「かえるがかえった。」 外に出ていったかえるを見てまぁくんは洒落を言った。 「…………。」 まぁくんの言った洒落に対し、ちぃは無言で答えた。 「ノーコメント!?」 ちぃの無言に思わずまぁくんはツッコミを入れた。 「雨にかえる……。 なんだかあたし達に縁があるみたいね。」 雨降る外を窓越しに見てちぃは言う。 「そうだな。 あの事件があった日も結婚式あげた去年も……こんな日だったからな。」 そう言ってまぁくんは顔を赤らめた。 ちぃにさりげなく話題を変えられた事は、気にしていないようである。 「あたし、まぁくんのお嫁さんになれて幸せよ。」 真剣な眼差しでちぃはまぁくんを見つめた。 「な、なんだよ急に。」 あまりにも真剣なちぃの眼差しにまぁくんは、どぎまぎしている。
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