届かない手

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海斗の大嫌いな、女性の黄色い声。 それでも笑顔を崩さない海斗の心情が、僅かに分からなくなった。 演技…だよね…? 答えなど決まりきっているのに。 そんな悪い疑問まで頭を過っていく。 「ねぇ、こんな素敵な海斗の奥さんてどんな人なんだろうね~」 ドキン! 突然近くから聞こえて来た女性の声に肩が反応してしまった。 恐る恐る横目で見ると、海斗のファンらしい女性2人組がひそひそと話している。 「超美人に決まってるって~!背高くて、キャリアウーマン、みたいな感じの!」 ……美人でもないし、背も小さいし…働いた事もない。 女性達の勝手な予想に、胸をグサリと刺されたような気がした。 「だよね!じゃないと釣り合わないよね。だって…あの海斗の奥さんだよ?」 「かっこよくて社長でおまけに俳優業まで完璧なんだもん。そんな人の奥さんが美人じゃないとか許せないよね~!」 グサグサと、言葉が刃となって心を引き裂いていく。 「あいつら…勝手な事言いやがってっ!」 隣にいた斗真が憤りを隠さず女性達に向き直ったのを見て、私は咄嗟にその腕を掴んだ。
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