届かない手

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「母さん?」 「…騒ぎになるわ。」 「でもっ…」 我慢ならない様子の斗真に力なく笑いかけ、ゆっくりと視線を海斗に戻す。 女性達に、釣り合わないと言われたからだろうか。 そこにいる海斗は、ナイトそのものに見えた。 たくさんの女性に囲まれ、笑顔を振り撒き。 触れられても嫌な顔ひとつせず、私以外の女性に甘い声で言葉を返す。 アナウンサーにインタビューをされるその姿も、芸能人そのものだった。 ………こんなに、遠くにいたっけ? 私達はいつも互いが互いの傍に居たはずだった。 触れたい時に触れられる距離にいて、話したい時に話せる場所にいて。 休日に2人で庭を散歩するだけでも、幸せだった。 そんな穏やかな日々が、本当に本当に幸せだったのに。 …今はこんなに遠い。 あなたが、遠過ぎる。 不意に泣き出してしまいそうになって、そっと手を伸ばした。 離れている海斗には届くはずもない手を。 「…母さん?」 そんな私を不審に思ったのか、斗真が不安げな声を漏らす。 その声にハッとして、力なく腕を下ろした。
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