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「…と、まあここまで色々言ってきましたが、私の本心は今夜の最終回でたっぷり語っていますので、どうぞそちらをご覧下さい。」
海斗の、低くてよく響く声。
マイクを通しているからなのか、離れた位置にいてもかろうじて聞き取れる。
「さすがですね。最後に番宣を入れてくるとは。」
アナウンサーが笑いながら言うと、海斗もくくっと喉の奥で笑った。
本心とは何だろう。
ドラマには脚本があって、その通りにセリフを言うのだから…本心などさらけ出す事など難しいはずだ。
少し気になって、足を止めて海斗を振り返る。
「…脚本家の方にお願いして、私の思いそのままをセリフにして頂いたんですよ。ラストの方のシーンです。皆さん、見て頂けますね?」
なるほど。
確かに、無理矢理出された海斗がお願いすれば、脚本をちょっと変えてくれるくらいはするかもしれない。
果たしてそのお願いが威圧的なものでなかったかどうかは定かじゃないけれど。
ファンの子がキャーキャー騒ぐ声を聞きつつ苦笑する。
そして車へ向かおうと再び向きを変えた瞬間、背後から大きな声が響いた。
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