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「遊里!!!」
「!?」
聞き慣れた声に名前を呼ばれ、肩だけじゃなく体ごと跳ね上がる。
何事かと一気に静かになったファンの視線が私に刺さっている気がして、恐る恐る後ろを振り向いた。
「!!」
やっぱり。
ファンだけじゃなく、アナウンサーやスタッフ、そして道行く人までが私に不審な目を向けている。
一瞬にして冷や汗が吹き出して、一歩後退った。
「ああもう!!何考えてんだよ父さんはっ!母さん、早く逃げるぞっファンに睨まれる。」
斗真が怒鳴るように言い私の腕を引く。
それと海斗がファンの波をかき分けて私の方へ走ってくるのはほぼ同時だった。
怖いのとびっくりしたのとで動けない私に、斗真が必死に何かを言っている。
だけど何も聞こえない。
ただ一直線に私へと走って来る海斗だけが、私の思考の全てを占めていた。
足の長い海斗はあっという間に目の前まで来て私を見下ろす。
そして意地悪く笑った後。
いきなり私の肩を抱いて自分の方へと引き寄せた。
「わっ!!」
「皆さん、紹介します。妻の遊里です。」
ナイトの口調で海斗が笑いかけた先には、いつ追いついたのか、テレビカメラのレンズがあった。
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