海斗が海斗に戻る日

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海斗の言葉に、強い瞳に、斗真がうっと口を閉じる。 すると悔しさからか唇を噛んだ斗真へと手を伸ばし、その頭を海斗がわしわしと撫でた。 「わっなんだよ!やめっ…」 「遊里を守るためについて来てくれたんだろう?礼を言う。ありがとう。」 「っ…」 海斗にありがとうと言われたのがよっぽど驚きだったらしい。 途端に斗真は固まり、目を潤ませた。 「…良い男に育ったな、斗真。」 とても優しい、でも少し寂しそうな声。 そして海斗の穏やかな笑顔を見て、私の胸が熱くなる。 ……海斗だ。 これは…私の知っている、海斗だ。 私の夫で。 子供達の良き父親で。 責任感が強く情に厚い。 優しくて、でも時折意地悪で。 すごくすごく温かい…私の旦那様だ。 ナイトなんかじゃない。 芸能人でもない。 だけど、誰よりも輝いている私の愛しい人。 さっきはあんなに遠くに感じてしまったのに…。 海斗は今、確かにここに居る。 私達の側で、笑ってるんだ。 「…海斗…」 「なんだ?」 「私が不安になる事なんか、なんにもないよね?」 「当然だ。ひとつもない。」 きっぱりと言いきった声に、私の全てが安堵に包まれる。 先ほどまでの疑問なんか、今の言葉ひとつで全て解決してしまった気がした。
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