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「いつもの…?ああ、そうだな。もうナイトになる必要もない。慣れない頃はプライベートや仕事でも役の口調が抜けなくて参ったしな。二度とごめんだ。」
うんざり、という顔をして、海斗が苦笑する。
そして長い指で私の顎を持ち上げ、端正な顔を近づけてきた。
「…じゃあ、今日は、海斗が海斗に戻る日…だね。」
唇が触れ合う間際に呟く。
海斗は一瞬動きを止め、「そうだな」と微笑んだ。
唇が合わさり、ちゅ、と濡れた音を響かせて離れる。
しかしすぐにまた引き寄せられるように唇を重ね、深く互いの舌を絡め合った。
「ん、あっ…ふ、んっ…」
口の端から零れる、水音と甘い喘ぎ。
激しいキスを交わしながら後ろに押し倒され、私は腕を持ち上げて海斗の首にすがった。
掴まっていないと、どこかに飛んでいってしまいそうだった。
キスだけなのに、体中がふわふわと快感に舞い上がる。
「遊里…っ…」
キスの合間に私の名前を呼ぶ海斗の声も、淫らに濡れていた。
やがて唇が離れ、首筋に強く吸い付かれる。
「あっ…!」
ピリッとする痛みと、喜び。
思わず海斗の髪に指を絡め、もっととねだるように軽く力を入れた。
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