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「……俳優として引っ張り出すのは本当にこれきりにしてくれと、羽山に伝えてくれ。俺は、これ以上見知らぬ誰かの瞳に映るつもりはない。」
「は、はい。それはもちろん伝えます。」
エリさんがかなり緊張しているのが痛い程に分かる。
海斗の声が真剣だったからだ。
緊張しているエリさんがなんだか可哀想になって、私はわざと茶化すように海斗を見上げた。
「あ、でも…バーテンダーの服、似合ってたよ。似合ってたよねエリさん!ドラマのDVDが出たら買おうかな!」
「必要ないな。」
……エリさんの緊張を和らげたかっただけなのだが。
これまた真剣な返しをされて固まるしかない。
「いつも目の前に俺がいるのに、そんなもの見る必要もないだろう。……どうしても見たいなら、いつも俺を映しておけ。お前の瞳の中のフィルムに、な。」
「!!!」
言うと同時に海斗の顔が間近に迫ってきて、胸が大きく跳ねた。
「…生憎、遊里のフィルムに映るだけで俺は満足なんだ。一瞬たりとも目を離すなよ。余所見は許さない。」
真剣で、熱い熱を孕んだ視線が私の瞳を焼く。
いや、瞳だけではなく、胸も、唇も、体の全てを火照らせ焼いていくのだ。
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