ドミノと月と空耳と

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いつも寝慣れているベッドが、いやに硬く感じた。いや、私の身体がおかしいのか。 消灯された部屋に色など無く、全てが闇に支配されていた。 閉まっているカーテンを見る限り、どうやら月明かりがあるようだが。もちろん私は、それを見ることはできない。動けないから。 違和感しかない空間、いつもと違う夜。これを、寝苦しいと言うのか。目をつむろうが変わらぬ色に、目を開けているのか閉じているのか錯覚すら起こした。 いつぞやに空想した死神が、ここぞとばかりに襲ってきそうで…… 私は、眠れなかった。 仰向けのまま、数十分が経った。もしかしたら、まだ数分かもしれない。時間の流れすら、麻痺している。 しばらくすると、何かが聞こえだした。最初は楽器か何かの音かと思ったが、どうやらそれは全く違っていた。 視界を奪われたも同然な空間で、ひたすら音が響く。耳の内側か、外側か。私はようやく聞き覚えのあるそれが、ドミノの倒れていく音だと認識した。 もちろんそれは、想像だ。実際にドミノが倒れていく音など、響くはずもない。 じゃあ、何なんだ? その音は、だんだん近づいてくるような気がした。五感が一つ失われ、聴覚が嫌に研ぎ澄まされていた。 こうして聞いていると、目が冴えてくる。時計の針も、聞こえ出すと厄介だ。似ている、それと。 これも数十分、聞こえていただろうか。私は嫌に疲れて、眠りにつこうとしていた。当然子守歌として、あのドミノの音。
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