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むせかえるような草の匂いと堅い土の感触に蒼は眉をしかめて、目を覚ました。
ゆっくりとギシギシ・ズキズキする体を半分だけ上げて、辺りを見回す。
蒼は緑豊かな森の中にぽつんっ、と独りで座っていた。
あまりにも理解出来ない状況に蒼はただ呆然とする。
(さっきまで倉の中にいたのに…どうして?此処はどこ?何で此処にいるの?)
答えの出ない疑問が頭の中をぐるぐる回る。
はっとして、痛む体を無理矢理動かして再度辺りを見た。
ドクンッドクンッ、と心臓が体の中で暴れている。
身体中の血が、さあっと下がった気がした。
「――紅っ!?紅!!何処にいるのっ???」
大きな声で呼んでみても、返事は来ない。
生まれた時からずっと一緒にいた、蒼の半身はどこにも居なかった――――――――
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