◆蒼・第1話◆

2/24
前へ
/28ページ
次へ
むせかえるような草の匂いと堅い土の感触に蒼は眉をしかめて、目を覚ました。 ゆっくりとギシギシ・ズキズキする体を半分だけ上げて、辺りを見回す。 蒼は緑豊かな森の中にぽつんっ、と独りで座っていた。 あまりにも理解出来ない状況に蒼はただ呆然とする。 (さっきまで倉の中にいたのに…どうして?此処はどこ?何で此処にいるの?) 答えの出ない疑問が頭の中をぐるぐる回る。 はっとして、痛む体を無理矢理動かして再度辺りを見た。 ドクンッドクンッ、と心臓が体の中で暴れている。 身体中の血が、さあっと下がった気がした。 「――紅っ!?紅!!何処にいるのっ???」 大きな声で呼んでみても、返事は来ない。 生まれた時からずっと一緒にいた、蒼の半身はどこにも居なかった―――――――― .
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加