116人が本棚に入れています
本棚に追加
カコン
その日丁度非番だった総司は、早速刀狩り首謀者を探していたのだが…
「人っ子一人居やしない。」
京の都は夜は静かだ。
皆日が落ち始めると、外には出ない風習がある。
「つまらないなあ~」
ボヤく総司の耳に、瓦を駆ける音が響いて聞こえた。
少しずつ近付いてくる足音。
総司の胸が期待でいっぱいになる。
まだか、まだか、まだか、まだか、まだか、まだか…近い!
「見つけましたよ!」
総司は気配のする方を目掛けて、小刀を力一杯投げつけた。
と、
「うわっ!危ないやろ!って、んー?沖田はん?」
総司はその姿に重い重い溜め息を吐いた。
何せ目当てのものでは無かったものだから。
「隊務帰りですか、山崎さん。」
どうでも良さげな総司に、山崎は苦笑しながら目線を同じくした。
「なんや、外れやったんか?まあそう落ちんとき!」
次もある。そう諦めていそうに無い総司の背を、明るく叩いて笑った。
「好きなものは先に食べるんだよ~」
つまり、興味を持てば早々に。が、彼の原動力だ。
ガシャ…
二人の上から瓦の滑る音が。
「なんや?」
見上げる山崎に、総司はニヤリ。笑った。
「見つけましたよ!」
総司が食い付いてやろうとするも…
「一日に一人と決めてるんだ。お互い残念だったね、お兄さん。」
藤志郎は自慢の足で、空を翔けた。
「番井 藤志郎。またね。」
すれ違った二人。
そして時代はゆっくり動き出す。
「わいはーー!?」
勿論、山崎も含めて。
最初のコメントを投稿しよう!