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「で、山崎はこの辺りで見失ったのか?」
思い立ったら即行動が信念の土方。総司の話を聞き、すぐさま総司を連れて道を辿った。
「ちぇ。自分は非番の時にしろーとか言ってたくせに。」
総司はやはり持つべき物は地位か。好きなように出来るんだから。ずっと愚痴って止まない。
「仕事は山積みだ。少しだけだ。ちょっと気になったんでな。帰りに団子奢ってやるよ。」
その一言で機嫌が治ってしまう総司は、純粋に単純なのだろう。
「気になるって何がですか?」
「噂じゃ番井ってのは相当腕が達つ。お前や山崎が袖にされたのも含めてな。なら、どこへ行った?今まで散々俺達を手招きしといて。」
絶好の機会だった筈だ。何かある。
と、
「おーい!ちゃんと母ちゃんに渡してやれよ!お前も薬嫌がるなよー!」
狭い長家が続く一室から子供が飛び出してきたかと思うと、昼間から眠そうに青年が少し後を追うようにして顔を出した。
「…………あっ!!!」
その青年に思わず声を上げて指差したのは総司だった。
「あれか?」
土方に言われ、自分の目に間違いは無い。と何度も頷いた。
それを見て土方がほくそ笑む。
間違いは無かった。ただの人間が、まるで神隠しにあうように一瞬で消える筈は無いのだ。
ならば考えられるのは、近辺に身を置いているという事。
「あ。バレた。」
藤志郎はあまりの呆気なさに、目を丸くしながら後退り。ピシャリと戸を閉めてしまった。
「やれやれ。何だってんだ?」
土方は藤志郎は壬生浪士組に興味があるのだ、と自ら足を運んだに関わらず逃げられてしまった事に意味が分からない。
「おーい!番井さーん!こーんにちはー!」
そんな土方をよそに、自由人総司。立てこもる藤志郎に、声を大にして呼びかけている。
勿論、注目の的だ。
「総司…止めてくれ…」
肩を落とす土方。総司はそんな土方の気持ちはどうでも良かったが、自分の肩を下げ前に出る土方に総司は後ろに下がった。
「何するんですか?」
総司の言葉に、問答してやる。
パターーーン…!!!
「こっちが早い。」
戸を蹴り倒してしまった。
「あーあ、どうすんですか?これ。」
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