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刀狩りで名を広め始めてどれ程経ったろうか。
まさかわざわざ出向いてくれるとは。けれど…昼間から試すのか。力量を。
そんな藤志郎を尻目に土方、総司はおかまいなくズカズカ土足で足を踏み入れてくる。
「やれやれ…思惑通りにはいかないか…」
本当は、人目の少ない夜が良かった。夜なら誰に迷惑もかけることは少ない。
「おい、人っ子一人居なくなったぞ。総司。」
家内を調べる二人。
藤志郎は逃げている訳では無い。直ぐそこ。直ぐ近く。
ああ、暑い。そろそろ午の月(6月)だろうか。汗が、滲む。滴る。
パタ…
藤志郎の滴る汗が合図になった。
「やった!俺が見つけたんですよ、土方さん!」
ヒュッ!風と共に斬る。藤志郎のいた天井の柱の一本を。太い木を軽く、まさに一刀両断。
「流石やりますね。」
藤志郎を無理矢理下へ引きずり落とした。けれど藤志郎はまだ、剣すら抜いていない。
「抜きませんか?お相手して頂きたいんですが。」
飄々として言う総司は裏を見せない笑顔だ。それを見ていると、まるで道を違えた以蔵を思い出す。
「俺はここじゃ抜かねーよ。」
それは。自分に好意で接してくれる人が、子供らが、居るからだ。
「いやあ、是非ともお願いしたいので…うちにしますか?」
うち…壬生浪士組か。願ったり叶ったりだ。
ただし、
「入隊させて貰えるなら?」
「それはちょっと待…
土方が言いかけて、総司が不適に笑む。
「それは俺と同等、もしくは俺以上なら歓迎しますよ。」
「問題無い。」
組へ向かう。
やはり暑い。緊張感も溶けてしまいそうだ。
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