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それにしても騒がしい…とゆーか皆羽目を外しすぎだ。
さっき会った原田は原踊りしているし、三馬鹿と紹介された同じ助勤の永倉、藤堂は「もっとやれ」と、はやし立てている。
「賑わしいのは苦手かい?」
一人黙々と飲んでいた藤志郎に、山南といった副長が話しかけてきた。
仮にも上司。なんとも言えず、藤志郎はただ曖昧に誤魔化して見せる。
「無理はしなくていい。君も仲間なんだ。仲間同士気遣うべきだからね。」
藤志郎は黙り込んだ。
山南の言う事は正しい。それが例え偽善であっても。
けれど…仲間?自分はまだここにいる半分くらいしか名前も覚えていない。
それに。仲間なんて出来れば枷になって自由でなくなる。平隊士ならばまだしも型にはまらず染まらずいられたかもしれない。
また、乾くのか。
「折角強い人間を見つけたのにな…」
血に。喉が。身体が。
「すみません、酔いを冷まします。」
群れるのは嫌いだ。
勿論、酔ってもいない藤志郎は垣根に飛び移り、屋根に寝転ぶと空を見上げた。
まるで円を描くような星空。皆異なる虫の声。
下に比べれば幾分もマシな気分でいられる。
「わしは…どうなっていくがじゃろう。」
呟きも、虫の声。
「…勤王党か…以蔵と行っちょったら…」
藤志郎は考えかけて、頭を振りかぶった。
勤王党に入れば入ったらで、駒のように武市に使われるのが目に見えている。
「わしは途中までは間違うちょらん筈だった…」
どこで間違えたのか。ここは人斬り集団と聞いて、わざわざ出向いてもらったが。やはり一人が良かったろうか。
と、
「酔い冷ましっちゅう訳や無いな。今までの話含めて色々聞かしてもらおか?わいは監察方、山崎 蒸。」
頭上に人がいるのに気付かなかった。気付けなかった。声が無ければきっとまだ気付けていなかっただろう。
「…凄いがぜよ。けんどわしは、なんちゃあ知らんがぜよ。」
山崎と見えるのは二度目だ。
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