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「で、お前どこの回し者だ?何しに来た?目的は?」
山崎に土方と二人にされてからずっと質問攻めにあっている。
まあ仕方ないのだ。つい、うっかり。言葉にしてしまった自分が悪い。
「回し者でも無いし、目的も…」
ただ単純に血に飢えていて。
「目的も?」
反芻する土方はとても味方に対するものではない。
全て話さなければ。目的も…言わなければ。いけないんだろうな…。
「それは…」
「それは?」
「それは藤志郎が民を思っての事ですよ~」
割って入ったのは総司だった。唐突で二人とも目が点だ。
「聞きましたよ~籐志郎、集めた刀を売って長家の人達の為に使ってたんですよね!あの子供に聞きましたよ。」
あの子供…確か初めて出会った時に居た。
「だからといって、信用に値しない。」
それもそうだ。人助けをしていたところで、そんな事誰にでも出来る。
それに、ついでだった。ガラクタが邪魔になっては売って、ついでに病に伏せっていると聞いて、薬を手に入れただけだ。
「でも勤王党の人なら、わざわざ俺らを拠って浪人だけを狙わないでしょう。それほどにここを必要としていたんじゃないですか?」
そうだ。
群れるのは嫌いだが、一人では自分の目的は果たせない。その為に、自分より、以蔵より強い人間が必要だった。
ここにいれば、ダントツ強い人間がいても可笑しくないし、出会うキッカケが出来るかもしれない。
「全ては可能性だけで、あなたがたに知って欲しかった。出会いたかった。信じられないのは分かりますが、俺は此処をどうにかするつもりは無い。言葉の訛りは、以前生業の人斬りをしながら剣術修行をしていた時に身についた。勤王党にも声がかかったが、あの集まりは好きになれなかった。これに嘘偽りは無い。」
以上。籐志郎はこれ以上に理由は無い。と頭を畳につけた。煮るなり焼くなり好きにされても良い、と意思表示か。
と、
「…分かった。わーかった!もういい!」
お手上げしたのは土方だった。
「信じる。信じるから、総司。お前は戻れ。この場の話は他言無用。」
それに総司は意気揚々と二つ返事で宴会へ戻っていった。
「…信じて…もらえるんですか?」
「お前が嘘偽りは無いっつったんだぞ。まあ、もう一つあるんだがな?」
今度の土方は意味深だ…
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