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「土左衛門が上がったらしいぞ。見に行くか?」
朝餉を済ました頃に原田が言ってきた。
それに籐志郎は食後で良かった、と心底思うのだった。本当は見たくない。土左衛門は水膨れて籐志郎的には美しい死に様とは思えないからだ。
それでも…じっとりと頭の先から足の先まで舐めまわすような土方の視線に耐えられない。
落ち着かないのだ。何て言えばいいのか、兎に角感じる好意が槍のように刺さって痛い。
あの日からずっとだ。視線を感じれば、必ず土方がいる。止めてほしいとも言ったが、全く聞き入れてくれなかった。
と、
「おや、藤志郎くんも行くのかい?」
藤志郎は身体を少し強ばらせた。来た。宴会の時に目をつけられた奴が来た。それは…助勤、武田 観柳斎。これは土方と違って、男色だ…。
「そ、そうですね~原田さん行くんですか?」
目が泳ぎながらも原田に話を振る。原田も武田の事を分かっているものだから、
「止めとくか!!飯の後だしな!!!」
こうやって何かにつけては助け舟を出してくれた。
「だ、そうですよ、武田さん。俺も止めときますよ。」
そして返事も聞かずに去るのが一番だ。
「今朝も藤志郎くんは可愛いなあ~」
袖にされていつつ、幸せな男だ。
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