序章

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ペリー来航。 ハリスの初代総領事としての日本への乗り込み。 これらを伴い、時代は一気に上を下への¨乱世¨を迎えた。 無論、大騒動になるのは当然。日常生活に支障をきたすのだ。 そして、幕府最高権力者、大老・井伊 直弼による¨安政の大獄¨を大弾圧にしようと試みるも、大老は暗殺され逆に幕藩体制は大きく動揺することになる。 なかでも、勤王志士と呼称される浪人は政治に介入しはじめた朝廷(公家)のもとへ出入りし、¨天誅¨と称しては反対派とおぼしき人間を見境無く斬り、愉快がる有り様。 それらを傍観していた藤志郎は呟いた。 「所詮他人事じゃ…けんど以蔵、おまんもこげに面白うない事しよるがか…」 生きる道を違えた二人。 優しく、人を疑わない情に厚い以蔵。 が、それは心配では無いようで。藤志郎は口端を上げた。 「以蔵以上に強いもんがおるんかが問題じゃ。わしの目的はこれからじゃ。せっかくその為に手に入れた自由。勿体無いがよ。まあ…目的を達成出来りゃあ文句は無いが。」 ふふ。一人空を仰ぎ見て、酒に心を酔わせた。 ただ心残りは、あの優しい以蔵…これから名を馳せるであろう岡田 以蔵の事だけだった… 「優しさは…残酷で、理想に呑まれがちじゃ。」 いつか、きっと壊れる。
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