予言

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「…以蔵。」 血にまみれた藤志郎に、以蔵が軽く笑った。 「また¨化け物¨ちゅうて罵られるち。」 その顔は、以前出くわした時よりも穏やかになったように思う。 「今はどうして?」 聞かずにはいられない。確かに梅は何とかする。そう言ったが、こうも変わるものだろうか。 「梅さんは…脱藩したぜよ。」 それだけでも驚きだが、 「梅さんは今、麟太郎先生(勝 海舟)について海軍繰連所の建設に尽力しちゅう。わしはその麟太郎先生の護衛じゃ。」 少しずつ何もかもが変わってきている。以蔵の落ち着いた顔に、何より気持ちが安らいだ。 「麟太郎先生がな、わしに人斬りは辞め言うんじゃ。護衛じゃあ言うのにな。」 以蔵が笑った。久々に見た以蔵。それは何処か楔が放たれたように晴れやかに見えて。これで武市の元には誰も居なくなったのだろう、と笑んだ。 「良かったな。」 藤志郎の一言に、以蔵が八重歯を見せ笑い、今度は藤志郎がどうしているのか。と聞いてきた。 「ああ、壬生浪士組に居る。今も巡察中だったんだよ。」 これは…敵対になるのだろうか。否、なるのだろう。幕吏は梅、こと坂本を探し回っている。 「目的は…果たせそうがか?」 「問題無いさ。場所も時も決めている。今の所狂いは無いよ。」 以蔵は藤志郎から訛りが無くなった事に少し寂しさを感じ、やはり自身目的からは目を反らさない事に勿体無い。と哀れに思った。 「以蔵、戻るなよ。そのまま梅について行け。絶対だ。」 藤志郎の全てを知っているかのような口振りに、以蔵は首を傾けながらも、 「分かっちゅう。」 返事して拳を合わせ、気持ち良く三度目に道を違えた。 「無理…なんだろうな…」 それは。 その意味は、月だけが知っているのだろうか。 赤く怪しく輝く。
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