■塩田と奈津

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  「えっ、ちょ、なっちゃんマジでこの人と知り合いだったんだ!」 友人のうち片方、黒いロングヘアのほうが少し大きな声をあげた。 電車の中くらい静かにしてくれないものだろうか、座ってる中年サラリーマンに睨まれたぞ。 岡野は無言で首肯。 相変わらず口数が少ないが、もう少し俺をフォローしてくれてもいいんじゃないだろうか。 どうしたらいいかさっぱり分からないんだが。 「ほら、あの、驚いてるみたいだよ? わぁ、いきなりごめんなさい、あの、あたしたち、ちょっと」 友人のうちもう片方、茶髪のショートヘアが少し興奮気味に俺に謝ってくる。 なんだか見世物になったようで居心地が悪い。 「塩田さん」 そこでようやく岡野が口を開く。 「少しお話する気ない?」 この状況でNOなんて言えるだろうか。 嵌められた気分のまま、俺はそれに頷いた。 黒のロングのほうは渡部、茶髪のショートは坂井というらしい。 なんてことはない、お互いの軽い自己紹介やら趣味やら大学のことやら、世間話を軽くしただけで終わった。 いや、話なんてものじゃない。インタビューだ。 俺から話題を振る事は無く、二人からの質問に答えるばかりで、岡野は終始無言。 結局岡野がどういう意図で俺とあの二人を引き合せたのかは、わからないまま。  
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