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「えっ、ちょ、なっちゃんマジでこの人と知り合いだったんだ!」
友人のうち片方、黒いロングヘアのほうが少し大きな声をあげた。
電車の中くらい静かにしてくれないものだろうか、座ってる中年サラリーマンに睨まれたぞ。
岡野は無言で首肯。
相変わらず口数が少ないが、もう少し俺をフォローしてくれてもいいんじゃないだろうか。
どうしたらいいかさっぱり分からないんだが。
「ほら、あの、驚いてるみたいだよ? わぁ、いきなりごめんなさい、あの、あたしたち、ちょっと」
友人のうちもう片方、茶髪のショートヘアが少し興奮気味に俺に謝ってくる。
なんだか見世物になったようで居心地が悪い。
「塩田さん」
そこでようやく岡野が口を開く。
「少しお話する気ない?」
この状況でNOなんて言えるだろうか。
嵌められた気分のまま、俺はそれに頷いた。
黒のロングのほうは渡部、茶髪のショートは坂井というらしい。
なんてことはない、お互いの軽い自己紹介やら趣味やら大学のことやら、世間話を軽くしただけで終わった。
いや、話なんてものじゃない。インタビューだ。
俺から話題を振る事は無く、二人からの質問に答えるばかりで、岡野は終始無言。
結局岡野がどういう意図で俺とあの二人を引き合せたのかは、わからないまま。
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