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「詳しい事はわたしの口から言えないんだけどね」
前置きをひとつ。
つまり岡野以外の誰かの思惑も絡んでいるのだろう。
「塩田さんに恋愛に目覚めて欲しかったの」
「……はあ?」
思わず頓狂な声があがる。
そうにしては随分的外れな気がしたし、意図不明だ。
俺が恋愛に目覚めたとして、そこからどうなる。
万が一の可能性、岡野なりに俺に対するアプローチを仕掛けていた、これは。
友人二人をあててきた時点で潰える。
もう一つはどうかというと、先輩が岡野を使ってまで俺にちょっかいを出す理由にしては薄過ぎる。
そもそも俺が恋愛に目覚めなんかしたら真っ先に矛先が向きそうなのは岡野自身のはずだ。
あの人は結構シスコン気味なところがあったから、大事な妹を男に差し出してやろうなんて思うはずもない。
これも、もう無いとみていいだろう。
説明されているはずなのに、ますます意味がわからなくなった。
岡野はじいっと俺を上目で見つめながら、少し声をひそませる。
「あの二人、塩田さんはどう思った?」
「どう、って。どうもこうもない。俺はあの二人のことを判断できるほど知らない」
印象で言えばあまり良くない。
だが曲がりなりにもこいつの友人なのだから、堂々と批判するのは避けておいた。
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