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「……そっか」
そう言って俯いた岡野はどこか残念そうな様子で、少しずつ筋書きが見えてきた気がする。
あまりそうとは思いたくなかったが、塞がっていった道から目を背けるともう、ここにしか行きあたらない。
「あの二人のどっちかに、俺が。惚れでもすればいいとか思ってたのか?」
岡野がそうして茶々を入れるとは考え難かった。
こいつの幼なじみの件も、友達と兄貴の件も、ただ見守っているだけで、寄りかかられない限りは動かなかったはずだ。
しかしもう、そうとしか考えられない。
そもそも最初から岡野の行動は不自然だったし、不自然さをいちいち気にしていたらそれこそ今さらかもしれない。
暫く黙っていたが、やがてこくりと頷いた。
「それはあの二人にあまりにも悪い気がするが」
「そんなことないよ」
今度はやけにはっきりと、迅速なレスポンス。
なにが『そんなことない』のかと尋ねかけたが、確かに、落ち付いて考えれば先週のあの二人の態度もなかなかに異常だった。
向こうからも悪くは思われていない、もっと傲慢な言い方をすれば好意的には思われていそうではある。
それにしたって、手札が少なすぎるように思った。
お見合いじゃあるまいし。
「……そうだよね、塩田さんだって嫌だよね。……本当に、ごめんなさい……」
消え入りそうな声とまではいかなかったが、岡野の声はだいぶ威勢を削がれていた。
ただでさえ元から淡々と喋る奴だというのに、よっぽど滅入っているらしい。
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