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「いや、そこまで謝らなくてもいいんだが。俺より、謝るべきはあの二人だろ」
「んー、そうでもないの。いいや、うん。塩田さんのことが気になってたんだって。どっちがとまでは言わないでおくけども」
急にしれっと態度を戻してそう言いだした。
なんなんだこいつは、相変わらずわけのわからない奴だな。
どうやらこいつがちょっかいを出してきたのは友達のためということで間違いない。
高校時代であればそんなことはしなかっただろうに、何かしらの心境の変化でもあったのかもしれない。
もしくは、唯一導線を結べる自分が動かなくてはという義務感に駆られて、だろう。
どちらかといえば、後者だろうか。
「あの小説も、どっちかの。もとは携帯小説らしいけど、わたしが先にちょっと読ませてもらって、まだマシな部類だし大丈夫かなと思って貸した」
「……ああ」
色々と合点がいった。
恋愛をして盲目的になるヒロイン、魅力的な女性であるライバルの登場、友人だと思っていた男からの告白……エトセトラ、エトセトラ。
言われてみればそういった携帯小説世代が好みそうな、いかにもな要素が詰め込まれていた気がする。
そして俺にとってそれらはやはり蓼でしかなくて、どんなに終わりがきれいだからと言われても途中で投げ出す以外の選択肢を選ぶ気は起きなかったのだ。
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