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ようやく手を解放されたのは、北校舎にある一年専用の昇降口。ここは当然一年の靴箱しかなく、三年である小林先輩の昇降口は南校舎にある。
これは送ってくれたと捉えていいのかな……?
小林先輩の意図が掴めなくて顔を見上げれば、先輩はいまいち感情の読み取れない表情でわたしを見下ろしていて。
「昼休み、中庭」
「えっ?」
相変わらずわたしの返事を聞かないまま、先輩は踵を返してしまった。
「行っちゃった……」
強引過ぎる。
昨日といい今といい、自分の言いたいことだけを言って去っていくのはやめてもらいたい。
大体、昼休みに中庭が何だと言うのだろう。中庭に来いっていうこと?
小林先輩は言葉が足りな過ぎると思う。
溜め息を吐き出しつつ辿り着いた教室のドアを開けると、クラスメートの視線が一斉にこちらを向いた。
「な、何!?」
クラスの全員が教室にいるわけじゃないけれど、複数の目に見られるのはさすがに怖くて、思わず一歩後ずさってしまう。
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