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時々知らない女子に呼び止められ、げんなりしつつも無事に辿り着いた中庭は、陽当たりもよく芝生が青々と繁っていた。梅雨直前とは思えない程、天気のいい今日ならさぞかし気持ちのいいことだろう。そう思うのは他の生徒も同じようで、いくつかのグループが芝生の上で食事をしている。
さて、小林先輩はどこだろう。来いと言ったからには、先輩もいる筈なんだけど。
「遅い」
「ぎゃっ!」
キョロキョロ辺りを見回していると背後から声を掛けられて、ビクリと飛び上がってしまった。
「何つー声出してんだよ」
くすくす笑うそれに振り返ると、表情を緩めた小林先輩が立っていて。
日光を浴びて透き通る金髪がサラサラと揺れて、綺麗だな、なんて頭の片隅で思ってしまった。
「あんまり遅いから、また迷子になってんのかと思った」
「失礼な。大体、わたしは来るなんて返事、してないじゃないですか。来なかったら先輩、待ちぼうけですよ」
「でも、ちゃんと来た」
本当、変な人。
「そ、うですけど……でも」
「いいから。飯、食おう」
そして、やっぱりすごく強引な人。
だけど、不思議とその強引さに不快は感じない。
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