人気者なキミ

8/15
前へ
/571ページ
次へ
時々知らない女子に呼び止められ、げんなりしつつも無事に辿り着いた中庭は、陽当たりもよく芝生が青々と繁っていた。梅雨直前とは思えない程、天気のいい今日ならさぞかし気持ちのいいことだろう。そう思うのは他の生徒も同じようで、いくつかのグループが芝生の上で食事をしている。 さて、小林先輩はどこだろう。来いと言ったからには、先輩もいる筈なんだけど。 「遅い」 「ぎゃっ!」 キョロキョロ辺りを見回していると背後から声を掛けられて、ビクリと飛び上がってしまった。 「何つー声出してんだよ」 くすくす笑うそれに振り返ると、表情を緩めた小林先輩が立っていて。 日光を浴びて透き通る金髪がサラサラと揺れて、綺麗だな、なんて頭の片隅で思ってしまった。 「あんまり遅いから、また迷子になってんのかと思った」 「失礼な。大体、わたしは来るなんて返事、してないじゃないですか。来なかったら先輩、待ちぼうけですよ」 「でも、ちゃんと来た」 本当、変な人。 「そ、うですけど……でも」 「いいから。飯、食おう」 そして、やっぱりすごく強引な人。 だけど、不思議とその強引さに不快は感じない。
/571ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10495人が本棚に入れています
本棚に追加