10495人が本棚に入れています
本棚に追加
中庭に植わる大きな木の下。先輩はその木にもたれ掛かってパンを頬張り出したのを見て、わたしもお弁当を広げた。
……メロンパンだ。
黙々とパンを頬張る小林先輩をチラリと盗み見る。
やんちゃしてますって見た目とは裏腹に、甘そうなメロンパンにかぶり付く姿は何だかかわいらしい。
ギャップといえばいいのだろうか。さっきの緩んだ笑顔もそうだけど、先輩の表情は意外にころころ変わる。
「何?」
うっかり盗み見が凝視になってしまっていたようで、訝しげに眉を寄せた先輩が顔を上げた。
「えっ、いえっ」
「いえ、って、そんなわけないだろ。何? メロンパンが欲しいの?」
「違います」
それだけは断じてない。きっぱりと否定をすれば、小林先輩はパックに入った牛乳をストローで吸った。
「じゃ、何?」
何、と聞かれても、わからないことだらけで何から聞けばいいのか困ってしまう。
けれど、ちゃんと話をしなきゃと決めたのだし、このまま疑問を持ったままでいるのはモヤモヤして気持ち悪い。
最初のコメントを投稿しよう!