人気者なキミ

11/15
前へ
/571ページ
次へ
「まぁ、そんなふうに言ってはいるな」 その言葉に顔を上げれば、木の幹に背中を預けた先輩は、立てた膝に頬杖をついてこちらを真っ直ぐに見ていて。 「じゃあ、どうしてわたしに付き合おうなんて言ったんですか?」 「……」 「告白が面倒だから、わたしを女の子避けにでもしたいんですか? 偽物の彼女がいたら、告白は減るだろうって考えたんですか?」 真っ直ぐ見据えたまま黙る小林先輩に、捲し立てるように次々と質問をぶつけた。 震えそうになる声に気づかないふりをして。 「そういう人が必要なら、わたしじゃなくて、別の人を当たってください。わたしは先輩の都合に付き合っていられる程暇じゃないんです。先輩から見たら、つまらない女かもしれませんけど、わたしだって人並みに恋愛したり、好きになってくれる人と付き合いたいんです」 一気に吐き出すと、ひとつ息をついてお弁当を閉じてバッグにしまった。 何も言わない先輩を一瞥して立ち上がる。 「わたし、小林先輩とお付き合いする気はありません。失礼しま……っ」 ガクリと視界が揺れて、再び芝生の上に座り込んでしまう。何で、と考えるよりも早く、わたしの手首を掴む小林先輩が引っ張ったのだと理解した。 「先輩、放してください」
/571ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10493人が本棚に入れています
本棚に追加