疑心暗鬼なキミ

14/16
10495人が本棚に入れています
本棚に追加
/571ページ
「ほんでも、勘違いで八つ当たるのは結構やけど、聡悟は人んこと言えんのと違う?」 「何がだよ。もう何言われても驚かねぇぞ」 次はどんなことをしたんだと投げやり気味に返せば、次の瞬間、篤史から信じられない言葉が飛び出した。 「俺は未遂。っても元々する気はなかったんやけども、お前は確信犯」 「確信犯って、何が」 「図書室って言えばわかるんやない?」 「それがどう……ちょっと待て。お前もしかして」 確信犯と図書室というワードに血の気が引いていく。 この流れでいったら辿り着くのは、俺だけの秘密。 「寝てる子にチュウすんのは卑怯なんやないか?」 「……っっ!」 悪いことが見つかったみたいに(実際はそうなのだが)心臓が飛び跳ねた。何か言い訳でもなんでも言わなければと口を開くも、音になることはなく金魚のように開閉をするだけだった。 それよりも何故篤史が知っているのか。 確かにあの日あの場には誰もいなかったわけじゃない。 それでも極少数だったし、皆自分の手元に集中して人のことなんか気に掛けてなかった筈だ。絶対とは言いきれないが、誰かに見られた可能性なんてゼロに近いと思っていたのに。
/571ページ

最初のコメントを投稿しよう!