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「いいよ。やっても。ミィの家に着くまでに、パスが多い方の負け。負けた方は、勝った方の願いをひとつ聞く。どう?」
「あの、駅までで大丈夫ですけど」
わざわざ家までなんて申し訳ない。そもそもわたしの家を知らないのに、そんなことを言って、ものすごく遠かったらどうするつもりなのだろう。
「俺が勝手に送るだけだからミィは気にしなくていい。それに、そっちの方がよりたくさんお互いを知ることができるだろ」
「それはそうですけど……」
「じゃ、決まり」
苦し紛れに自分から提案したそれの主導権は、いつの間にか小林先輩のもになっていて、ミィからどうぞ、なんて言われてしまった。
「わたしですか? えっと……先輩の誕生日は?」
「無難な質問だな。十一月十日」
無難って……。
だって、約束のこともあるし、あまり踏み込んだこと聞いちゃだめだと思ったから。
交差点を曲がると、学校の最寄り駅が目の前に現れる。
「じゃあ俺。ミィ、下りる駅は?」
「え? あ、公園前です」
「了解」
そう言った先輩は、迷いなく切符を買って改札を抜ける。
「あ、電車きてる。行くよ、ミィ」
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