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ギリギリセーフで乗り込んだ電車は、仕事終わりのサラリーマンや隣駅の男子高生でごった返していて、身長が標準よりちょっぴり小さめなわたしには息苦しい。
もう一本遅らせたらよかったかも、と溜め息を吐き出した時、急に息苦しさが消えた。
「平気?」
「あ、はい……ありがとうございます」
ドアに手をついてスペースを作ってくれた小林先輩がわたしを見下ろしていて、あまりの至近距離に目を逸らしてしまった。
手を繋ぐのは平気だったのに、何故だか正面から顔を見るのは慣れない。
「ミィの番」
「へっ?」
ポツリと落とされた言葉で、ゲームの途中だったと思い出した。
「んー、小林先輩の家はどこなんですか?」
「桜町だけど」
「は!?」
思わず大きな声が出てしまい、慌てて口を押さえた。
だって、桜町っていったら、わたしが下りる駅から四十分はかかる……しかも、今乗ってる電車とは反対方向で。
「何であっさりこっちに乗ってるんですか!」
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